Vol.7
宝石のご購入前に
知っておきたい
処理のはなし(前編)
前回の信頼できる鑑別機関についてお話した際、コランダムに行われている加熱処理について少し触れました。
今回は、その加熱処理などの宝石に施されている様々な処理について話をしたいと思います。
処理は、宝石の外観または性質を人工的に変え、改善する工程と定義されています。
当然ながら、石をカットや研磨することは処理に含まれません。
原石でもカットされた石でも、宝石はその色やクラリティ、輝き、または耐久性が向上するように処理されていることが多くなっています。
大昔の時代から宝石をよく見せたい、あるいは天然の外観とは異なるものにしたいという願望があり、実に多種多様な処理があります。
以前は日本では「ナチュラル」「エンハンスメント」「トリートメント」という3つの処理区分が用いられていましたが、現在は、消費者保護の観点からより詳しい情報開示のニーズが高まり、具体的な処理の内容が鑑別書に記載されるようになっています。
それでは具体的にどのような処理があるのかをみていきましょう。
主な処理は以下のタイプに分けることができます。
- 染色
- コーティング
- 含浸と充填
- 加熱
- 拡散
- 照射
- レーザー処理
- 高圧高温処理
順番にどのような処理なのかを説明いたします。
- 染色
- 染色とは、宝石の色を変えたり、一定の色を作り出すために様々な染料を用いて色を染める処理です。
- コーティング
- コーティングとは、宝石の色を良くする、あるいか変えるために色のついた層を石の表面全体または一部に塗布する処理です。
- 含浸と充填
- 含浸と充填とは、宝石の外観を良くする、あるいは多孔質の石の耐久性を向上させるためにオイルなどの物質を使って施される処理です。
- 加熱
- 加熱とは、宝石の色を良くする、取り除くまたは色を抜くために様々な温度で熱を加える処理です。
- 拡散
- 拡散とは、様々な着色元素を外部から加えることで、宝石の色または光学効果を変える処理です。
- 照射
- 照射とは、人工的に放射能を照射することで、原子の配列を変え、色を変化させる処理です。
- レーザー処理
- レーザー処理は、黒色インクルージョンを除去するためにレーザー光線でダイヤモンドに穴を開け強い酸で漂白する処理です。
- 高圧高温処理
- 高圧高温処理は、ダイヤモンドの色を変えるために高圧高温環境下で施される処理です。
このように主な処理だけでも多くの種類の処理があるのです。
では、宝石に処理をするとどのような変化があるのかをみていきましょう。
まずは、コランダム(ルビー、サファイア)について。
コランダム(ルビー、サファイア)は色の美しさを向上させるために一般的に加熱が行われています。
市場に流通している石の95%以上は加熱されていると言われています。
加熱の目的は4つあります。
- 濃いものを明るく
- 薄いものを濃く
- 余分な色を除去
- 色調の変化
石の色味や産地、内包物の状態などをみてその石に最適な加熱温度や方法を選択することで石の美しさを向上させます。
一方で加熱することで失われるものもあります。それは透明度や輝きです。
熱を加えることで内包物が溶けるため、透明度が下がり、輝きが失われるリスクがあります。
色をよくするために加熱することで、犠牲になっているものも少なからずあるいうことです。
また、ルビーで気をつけなければならない処理は鉛ガラスを含浸したものです。
鑑別結果はルビーになっていても処理コメントは加熱とは違い、鉛ガラス含浸というコメントがついています。
これは内包物、主に割れの多いルビーに鉛ガラスを入れることで割れを目立たないようにするものです。
ですから、耐久性、安全性、品質面の全てにおいてあまり良いものとはいえません。
コランダムの処理としては拡散処理といわれるもの。
代表的な拡散処理として、オレンジサファイアにベリリウム拡散をすることで表面にピンクをまとわせ、パパラチアサファイアのように仕立てたものがあります。
またそのほかにも様々な着色元素を加えることで色を変化させることができ、ブルーサファイアにもこのベリリウム拡散処理が施されたものが出回っていた時期もありますので注意が必要です。